日本製包丁をアメリカへ輸出する方法|Section 232とLacey Actの注意点
日本製の包丁をアメリカへ輸出する際は、鉄鋼関税「Section 232」と、木材規制「Lacey Act」の2つの確認が重要です。2026年4月の関税制度改正、2025年8月のKitchen Knife追加、2026年1月からのLacey Act電子申告義務化まで、時系列で正確に解説します。

日本製の包丁をアメリカへ輸出する際に確認すべき制度は、大きく2つです。鉄鋼製品に追加関税を課す「Section 232」と、木材を規制する「Lacey Act」。どちらも「包丁だから一律◯◯」ではなく、HTSコードや材質によって対応が変わる点に注意が必要です。
この記事の要点
- Section 232は鉄鋼・アルミの輸入に追加関税を課す制度。Kitchen Knife(HTS 8211.91.20など)は2025年8月から対象に追加された
- 2026年4月6日から計算方法が変更され、対象区分(Annex)に応じて完成品全体の価値に25%または50%が課税される
- 「税率が50%→25%になった=負担が減る」とは限らない。計算のベースが広がったため、鉄鋼比率が低い製品ほど負担が増える場合もある
- 木製ハンドルの包丁はLacey Actの対象になる可能性があり、対象の場合は木材の学名(Genus・Species)等の申告が必要
- Lacey Actの紙申告(PPQ505)は2026年1月1日で廃止され、電子申告(ACE/LAWGS)に一本化された
Section 232とは
Section 232は、米国の通商拡大法(Trade Expansion Act of 1962)232条に基づく措置で、国家安全保障上の理由から鉄鋼・アルミニウムなどの輸入に追加関税を課す制度です。日本からの輸入品も対象になり得ます。
対象は鉄鋼・アルミそのものだけでなく、「派生製品(derivative products)」にも段階的に拡大されてきました。派生製品とは、鉄鋼・アルミを使った加工品全般を指し、包丁もこの枠組みで議論されます。
いつからKitchen Knifeが対象になったか
2025年8月、Section 232の対象となる鉄鋼派生製品のHTSコードが大幅に追加されました。この際、Kitchen Knife(HTS 8211.91.20など)が対象リストに加わったことが、複数の貿易実務情報で確認できます。
ここで重要なのは、「包丁だからSection 232の対象」ではなく、「特定のHTSコードに分類される包丁が対象」という理解です。実際、刃物であっても対象リストに含まれていないHTSコードも存在します。自社の包丁がどのHTSコードに分類されるかは、個別に確認する必要があります。
税率の計算方法(2026年4月に大きく変更)
Section 232の税率と計算方法は、次のように変遷してきました。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年2月 | 対象となる鉄鋼派生製品の範囲を拡大 |
| 2025年6月4日 | 鉄鋼・アルミのSection 232税率を25%から50%に引き上げ |
| 2025年8月18日 | Kitchen Knife(HTS 8211.91.20等)を含む多数のHTSコードを派生製品として追加 |
| 2026年4月6日 | 計算方法を再編。対象区分(Annex)に応じて、完成品全体の価値に課税する方式に変更 |
2026年4月6日以降の新しい制度では、対象区分によって次のように税率が分かれます(Foley & Lardner法律事務所の解説による)。
- Annex I-A(鉄鋼・アルミそのもの、ほぼ金属の製品など):完成品全体の価値の50%
- Annex I-B(完成した派生製品で、全体が金属ではないもの):完成品全体の価値の25%
それ以前の制度では「鉄鋼・アルミ含有部分の価値」だけに課税する方式でしたが、新制度では完成品全体の価値が課税ベースになった点が大きな変更です。
「50%が25%になった」だけでは判断できない理由
ここが特に誤解されやすいポイントです。数値の考え方を、あくまで説明のための概算例で確認してみます。
- 旧制度のイメージ:申告価格$200、うち鉄鋼部分$80の包丁の場合 → $80 × 50% = $40
- 新制度(Annex I-Bに該当する場合)のイメージ:申告価格$200の包丁の場合 → $200 × 25% = $50
このように、税率は50%から25%に下がっていても、課税のベースが「鉄鋼部分」から「完成品全体」に広がっているため、鉄鋼が占める割合が小さい製品ほど、かえって税額が増えるケースがあります。「税率が下がった=負担が軽くなった」と単純に考えるのは危険です。
自社の包丁が実際にどちらの区分(Annex I-A/I-B)に該当し、税額がいくらになるかは、HTSコードと申告価格をもとに個別に確認する必要があります。
もう一つの確認事項:Lacey Act(木製ハンドルへの規制)
Section 232とは別に、木製ハンドルを使う包丁で問題になりやすいのがLacey Actです。Lacey Actは、違法伐採された植物・木材製品などのアメリカへの輸入を規制する法律です。
対象となる製品を輸入する際は、次のような情報の申告が求められます。
- 木材の学名(Genus・Species)
- 原産・伐採国
- 木材の数量
- 製品の価値
- HTSコード
- 輸入者・荷受人の情報
ただし、木製ハンドルを使っていれば必ず申告が必要というわけではありません。植物材料を含み、かつ完成品のHTSコードがAPHISの対象リストに含まれ、正式な輸入形態(formal entry)に該当する、といった条件を満たす場合に申告が求められます。対象かどうかは、HTSコードごとに確認が必要です。
木材は「学名」で申告する
Lacey Actの申告でよくあるつまずきが、木材の名称の書き方です。APHISのガイダンスでは、「Walnut」「Oak」のような一般名・通称名ではなく、学名(属名Genus・種名Species)で申告することが求められています。一般名だけで申告すると、通関で問題になる可能性があります。
なお、APHISが認めた特定のケースでは、Special Use Designation(SUD)という例外的な扱いを使える場合もあります。
2026年からLacey Actの申告方法も変わった
これも見落とされがちな変更点です。2026年1月1日以降、紙のPPQ Form 505・505Bは原則として受け付けられなくなりました。現在は、CBPのACE(Automated Commercial Environment)、またはAPHISのLAWGS(Lacey Act Web Governance System)を通じた電子申告が必要です。紙での提出は、システム障害時などの例外的な状況に限られます。
「PPQ505を印刷して箱に入れておけば大丈夫」という以前の情報のままでは、現在は対応できない点に注意してください。
輸出前に確認すべきこと(チェックリスト)
日本製の包丁をアメリカへ輸出する前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 自社の包丁が該当するHTSコードは何か
- そのHTSコードはSection 232の対象(Annex I-A/I-Bのどちら)か
- 対象の場合、申告価格に対してどの程度の追加関税が見込まれるか
- ハンドルなどに木材を使用しているか、使用している場合の樹種(学名)は何か
- 完成品のHTSコードはLacey Actの対象リストに含まれるか
- 対象の場合、ACEまたはLAWGSでの電子申告の準備ができているか
関連する公式書式・資料(ダウンロード)
申告や情報整理の際に参照する、公的機関が公開している書式・資料へのリンクです。
- PPQ Form 505(Lacey Act 植物・植物製品申告書) — APHIS公式PDF。2026年1月1日以降は紙での提出自体は原則不可ですが、電子申告(ACE/LAWGS)で入力する項目の確認・社内での事前整理用としては参考になります。
- Lacey Act申告の手続き案内(APHIS公式ページ) — 電子申告(ACE/LAWGS)への入り口、最新の要件がまとまっています。
- CBP Form 7501(Entry Summary/輸入申告書) — Section 232対象品は、鉄鋼・アルミ含有部分とそれ以外を分けて2行で申告する場合に使われる様式です(CBP公式PDF)。
- CBP:Section 232鉄鋼・アルミニウム関税 FAQ(公式ページ) — 税率・申告方法に関する最新の公式Q&A。
自分で対応できるケースと相談したほうがよいケース
自分で対応できるケース
- 過去に同じ商品・HTSコードでアメリカへ輸出した実績があり、対応方法が確定している
- 木材を使用しておらず、Lacey Actの対象外であることが明確な商品
- HTSコードと該当区分(Annex)を自社で確認・申告できる体制がある
相談したほうがよいケース
- 包丁のHTSコードや、Section 232の対象区分(Annex I-A/I-B)の判断に迷う
- 木製ハンドルを使用しており、Lacey Actの対象かどうか、樹種の学名が分からない
- 電子申告(ACE/LAWGS)への対応が初めてで、進め方が分からない
- 制度改正が続いており、最新の取り扱いを都度確認するのが負担
Hassooでは、包丁を含む刃物の海外発送実績があり、Section 232やLacey Actへの対応を含めた輸出書類の作成をサポートしています。HTSコードの確認やハンドルの材質など、迷う点があればお気軽にご相談ください。
※本記事は2026年8月時点で確認できた公表情報にもとづく一般的な解説です。Section 232・Lacey Actとも制度改正が続いており、税率・対象品目・申告方法は今後も変更される可能性があります。また、個別の商品がどのHTSコード・対象区分に該当するかは商品ごとに異なります。実際の輸出前に、最新の情報および専門家・通関業者・CBP/APHISへの確認を必ず行ってください。
参考情報
よくある質問
A.商品のHTSコードによっては対象になります。2025年8月の対象拡大で、Kitchen Knife(HTS 8211.91.20など)がSection 232の鉄鋼派生製品として追加されました。ただし「包丁なら一律〇%」ではなく、HTSコードや材質による個別確認が必要です。
A.2026年4月6日以降の制度では、対象区分(Annex)によって異なります。鉄鋼そのもの等の区分(Annex I-A)は完成品価値の50%、完成した派生製品の区分(Annex I-B)は完成品価値の25%が原則です。以前は「鉄鋼含有部分の価値」だけに課税する方式でしたが、現在は完成品全体の価値に対して課税される点が大きな変更点です。
A.必ずしもそうとは限りません。旧制度は「鉄鋼含有部分の価値×50%」、新制度は「完成品全体の価値×25%」を基本とするため、鉄鋼部分の比率が小さい製品ほど、計算のベースが広がり、結果的に税額が増えるケースもあります。実際の税額はHTSコードと申告価格で個別に確認してください。
A.対象になる場合があります。ただし「木製ハンドル=必ず申告」とは限らず、完成品のHTSコードがAPHISの対象リストに含まれているか等の条件によります。対象になる場合は、木材の学名(Genus・Species)、原産国、数量、価額などの申告が必要です。
A.使えません。APHISは学名(属名Genus・種名Species)での申告を求めており、一般名・通称名のみでの申告は認められていません。特定の状況ではSpecial Use Designation(SUD)という例外的な扱いもありますが、原則は学名です。
A.2026年1月1日以降、紙のPPQ Form 505・505Bは原則として受け付けられなくなりました。現在はCBPのACE、またはAPHISのLAWGSを通じた電子申告が必要です。紙での提出はシステム障害時などの例外的な対応に限られます。