TSCAとは?アメリカ輸出に必要な輸入証明とSDSの違い|ディフューザーも対象
TSCA(有害物質規制法)第13条は、アメリカへ化学品を輸出する際に輸入者が署名・提出する輸入証明制度です。SDS(安全データシート)とは別の書類で、アロマディフューザーなど香料製品も対象になりやすい品目です。未提出・不備の場合の通関拒否・返送リスクまでEPA公式情報にもとづき解説します。

アメリカへ化学品やアロマディフューザーなどを送る際は、製造者が作成するSDS(安全データシート)に加えて、輸入者がTSCA(有害物質規制法)第13条に基づく輸入証明へ署名・提出する必要があります。この証明が未提出・不備の場合、通関が拒否されたり、貨物が留置・返送・廃棄の対象になったりすることがあります。
この記事の要点
- 化学物質・混合物(またはそれらを含む製品)をアメリカへ輸入する際は、TSCA第13条の輸入証明が必要になる場合がある
- 証明には「TSCAに適合している(positive)」「TSCA対象外である(negative)」の2種類があり、輸入者(または委任代理人)が署名する
- SDSとTSCA輸入証明は別の書類。SDSは製造者が作成する危険性情報、TSCA証明は輸入者の法的な証明
- アロマディフューザーなどの香料製品も、香料オイル入りの化学混合物として証明が必要になりやすい
- 証明が未提出・不備だと、通関拒否・貨物留置・返送や廃棄につながる可能性がある
TSCAとは何か
TSCA(Toxic Substances Control Act:有害物質規制法)は、アメリカで流通する化学物質を規制する連邦法です。この法律の第13条に基づき、アメリカへ化学物質・混合物、またはそれらを含む製品を輸入する際には、輸入証明(Import Certification)の提出が求められます。
証明には2種類あります。
- Positive Certification(適合証明):「この貨物に含まれるすべての化学物質は、TSCAおよびTSCAに基づく規則・命令に適合している」という証明
- Negative Certification(対象外証明):「この貨物に含まれる化学物質はTSCAの対象ではない」という証明
貨物の内容に応じて、いずれかの証明を輸入時に行います。
SDSとTSCA輸入証明は別物
ここは混同されやすいポイントです。
- SDS(Safety Data Sheet:安全データシート):化学品の製造者・供給者が作成する、成分・危険性・取扱い方法などをまとめた資料です。輸入者が作成するものではありません。
- TSCA輸入証明:輸入者(または委任された代理人)が、貨物のTSCA適合状況について法的に証明・署名する書類です。
SDSは、貨物がTSCAの対象かどうかを判断したり、通関業者が分類する際の参考資料として使われますが、SDSを提出すればTSCA輸入証明の代わりになる、というものではありません。両方が必要、と理解しておくのが安全です。
誰が署名するのか(輸出者ではなく輸入者)
TSCA輸入証明は、アメリカ側の輸入者(または輸入者から委任された代理人)が署名します。証明には、署名者の氏名・メールアドレス・電話番号の記載も必要です。
日本から発送する側(輸出者)が直接署名する書類ではありませんが、輸入者がスムーズに証明できるよう、貨物の内容(化学物質名、成分、SDSなど)を事前に整理して共有しておくことが重要です。
アロマディフューザーも対象になりやすい理由
「化学品」と聞くと工業用薬品をイメージしがちですが、アロマディフューザーやフレグランス製品もTSCAの対象になりやすい品目です。
理由は分類にあります。リードディフューザー(HTS 3307.49など)は、香料オイルと溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)を混合した化学混合物として扱われることが一般的です。TSCAでは、化学物質を組み込んだ完成品(article)は証明が不要になる場合がありますが、香料オイルのような「混合物そのもの」は articleとして扱われず、TSCAの対象になりやすい傾向があります。
雑貨・ギフト用品として発送する場合でも、中身が香料オイルなどの化学混合物であれば、TSCA証明の要否を事前に確認しておく必要があります。
証明が未提出・不備だとどうなるか
「TSCA証明を出さないとどうなるか」は、実務上とても重要なポイントです。
- 通関拒否:証明が適切に提出されるまで、税関(CBP)は貨物の通関を認めません
- 貨物の留置:TSCA違反の疑いがある場合、貨物が留置されることがあります(原則48時間以内にEPA側へ引き渡されます)
- 是正・輸出・廃棄・放棄:違反と判断された貨物は、是正措置を取るか、輸出(=日本への返送を含む)・廃棄・自主放棄のいずれかの対応が必要になります
- 罰則:違反1件につき最大5万ドルの民事罰の対象になることもあり、悪質な場合は刑事罰の対象になることもあります
つまり、「提出しないと返送される可能性がある」というのは実際に起こり得ることです。事前の確認を怠ると、貨物が届かないだけでなく、追加のコストやトラブルにつながります。
TSCA輸入証明はどこで提出するか
- 電子申告:CBPのACE(Automated Commercial Environment)を通じて提出します
- 書面:通関前に該当書類へ証明文言を記載し、税関長に提出します
以前あった紙の「一括(blanket)証明」の仕組みは2017年3月21日付で廃止されており、個々の貨物ごとに証明する運用が基本です。
発送前に確認すべきこと(チェックリスト)
- 貨物の中身に化学物質・混合物が含まれるか(香料オイル、洗剤、塗料、接着剤、ディフューザー等を含む)
- 該当するHTSコードは、TSCA証明が必要になりやすいリストに含まれるか
- 製造者からSDSを入手できているか
- アメリカ側の輸入者が、TSCA輸入証明(positive/negative)への署名を準備できているか
- 証明の提出方法(ACE電子申告または書面)を輸入者と事前にすり合わせているか
自分で対応できるケースと相談したほうがよいケース
自分で対応できるケース
- 過去に同じ品目でアメリカへ発送した実績があり、TSCA証明の要否が確定している
- SDSを保有しており、輸入者側も証明の準備に慣れている
- 貨物の内容が明確な化学物質を含まず、articleとして扱われることが明らかな場合
相談したほうがよいケース
- ディフューザーや香料製品など、TSCA対象かどうかの判断に迷う品目を初めて送る
- SDSを取得できていない、または内容の整理に不安がある
- 輸入者側にTSCA証明の対応方法を説明する必要がある
- 過去に通関拒否・留置を経験したことがある
輸出書類の準備は、化学物質の内容や輸入者との連携が絡むため負担に感じやすい部分です。Hassooでは、FedExを利用したアメリカ向け発送の輸出書類作成をサポートしています。貨物の内容やSDSの有無をお知らせいただければ、必要な確認事項の整理をお手伝いします。
※本記事は2026年8月時点でEPA(米国環境保護庁)が公表している情報にもとづく一般的な解説です。TSCAの対象品目・証明方法・罰則等は変更される場合があり、個別の貨物がTSCA証明の対象になるかどうかは製品の成分・分類によって異なります。実際の発送前に、アメリカ側の輸入者およびEPA・CBPの最新情報を必ずご確認ください。
参考情報
よくある質問
A.化学物質・混合物、またはそれらを含む製品を輸入する場合に必要です。ただし、化学物質が「article(完成品としての製品)」の一部であり、TSCAの特定規則で個別に要求されていない場合は証明が不要なケースもあります。対象かどうかはHTSコードや製品の性質によって判断します。
A.輸入者(または輸入者から委任された代理人)が署名します。氏名・メールアドレス・電話番号の記載も必要です。日本の輸出者ではなく、アメリカ側の受取人・輸入者が対応する書類である点に注意してください。
A.別のものです。SDSは製造者・供給者が化学品の危険性やハザード情報をまとめて作成する資料で、輸入者が作成するものではありません。一方TSCA輸入証明は、輸入者が「この貨物の化学物質はTSCAに適合している(または対象外である)」と法的に証明する書類です。SDSは、TSCAの該当・非該当を判断する際の参考資料としても使われます。
A.必要になる場合があります。特にリードディフューザー(HTS 3307.49等)は、香料オイルと溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)を混合した「化学混合物」として分類されることが多く、完成品(article)ではなく化学物質・混合物として扱われるため、TSCA証明の対象になりやすい品目です。
A.証明が適切に提出されるまで、税関は貨物の通関を拒否します。また違反の疑いがある場合は貨物が留置されることもあります(原則48時間以内にEPAへ引き渡し)。違反と判断された貨物は、是正・輸出(返送)・廃棄・放棄のいずれかの対応が必要になり、違反1件につき最大5万ドルの民事罰の対象になることもあります。「提出しないと返送される可能性がある」というのは実際に起こり得ることです。
A.電子申告の場合はCBPのACE(Automated Commercial Environment)を通じて提出します。書面の場合は、通関前に該当書類へ記載し税関長に提出します。以前あった紙の「一括(blanket)証明」は2017年3月21日に廃止されています。